月に憧れた兎の思考

いつか「創る」時のために。ひっそりと。

10月上旬、ダラダラと。

・君

 

「いつまでもここで待ってるから」

最後に振り絞って君に届けたその言葉は誠意か、或いは呪いか。

 

好きな歌手、ずっと変わらない。

だからその歌手を好きになってくれた君のことも、忘れられない。

 

今日は月が綺麗なのに、「月が綺麗ですね」という言葉が邪魔をする。

 

・yokohama

 

夜の赤レンガ。

あちらもこちらも2名様。だけどこの街では不思議と孤独を感じない。

独り、赤レンガ前の広場を歩く。海風が頬を撫でる。

海は闇に染まる。吸い込まれるように近づく。自分のこの身まで闇に溶けてしまいそう。

船の汽笛が聞こえる。煌びやかに輝く大型船が遠ざかって征くのが見える。

ふと後ろを見ると大きな観覧車がのんびりぐるぐる回転している。

全て、変わらない。

ここは横浜、赤レンガ前。

2022年9月終わり

・記憶

 

忘れたい出来事がある。はい。いいえ

忘れたい人がいる。はい。いいえ

忘れようとするほど記憶は鮮やかに蘇る。はい。いいえ

いつまでも忘れられない。はい。いいえ

 

君と僕の記憶は2つで1つ。表と裏。

同じ景色に2つの記憶。2つの感情。どちらもどちらも。

溶け合えば完全。でも溶け合うことが恐怖。

自分が裏であること、怖い?

 

いつか会った旅商人は言った。病に伏す家族のために遠くまで出向いて売っていると。

旅人も色々、一期一会。薬草1つ買って良き旅を。

それから暫く、違う場所であの時の旅商人。家族はどうした。すっかり良くなった。

薬草1つ5ゴールドの出会いもどこか明るい。

 

出会わなければ味わわなかった苦い思い。

自分の罪だと脳裏にこびりつく記憶を背負って生きる。

「他人」の幸せをどこか祈る。

これが贖いだと、震えながら。

 

「昔のことなんてきれいさっぱり ゴミ箱に葬り去って 前だけを見て進みたい」

誰かは歌う。

ココロから深く頷いてみる。それなのに捨てられない、ゴミ箱はドコ?

 

誰かと見た海。夕暮れ時。言葉交わさずただ眺めていた。

砂浜に寄せる波。どこまでも青。空も澄んで。

なのに晴れない独りと独り。同じ景色並んで眺めても交わらない、ふたり。

一言交わせば全て終わる。もう一言交わせば全て始まる。

でも聞こえるのは、ただ、波音。

あの時のことを思い出す。と言ってももう何年も前のことで何もかもちゃんと覚えているわけじゃない。

記憶は褪せるという。でも記憶は美化されるともいう。

どちらも事実だろう。セピア色に映りながら眩しいのは夕暮れの所為だろうか。

どうしてあの時、伝えなかったんだろう。

答えはある。記憶の中に。あくまで、僕のだけど。

あの人はどうだろうか。なんて愚問であの人も答えを持っていると確信している。

今「答え合わせ」をすれば「始まる」だろうか?

それもまた愚問なんだと思う。

あの時は戻らないからキオクなんだ。

そう言って、今日も孤独をブラックコーヒーと飲み干す。

 

・伝える

 

命がいつまで続くかなんて分からない。

皆そこそこ長く生きてる。だから自分もそうかなって思ってるだけ。

明日そこにもうワタシはいないかもしれない。

だったら其の言葉、渡せるうちに渡したくならない?

 

動物とお喋りできないのはとても残念だよ。

皆が何を考えてるのか分かればいいのにって思う。

でもだからこそ感謝してる。君とこうしてお喋りできていることに。

僕の思いが君に届くこと、実は奇跡なんだと思うよ。

 

誰かにいつでも容易くメッセージが送れること。

自分の言葉が水の如くどこかへどんどん流れて行ってしまうようで怖い。

でも凄いことだ。遠く離れた友に手紙を書いていたあの頃が噓のようで。

便利だ。だけどあの頃もあの頃で幸せだったと思う。

 

考えてること一緒だねって君は笑った。

僕はその笑顔が嬉しかった。でもそうじゃなかったよね。

半分、否定しなきゃいけなかったね。でも、君と僕は違うよ、って。

僅かな共鳴。繋がる幸せ。甘えた僕。さよなら、君。